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米自動車保険業界は窮地に立たされている――J.D. パワー 2022年米国自動車保険事故対応満足度調査℠

アメリカ,自動車保険
(画像= Canva、La Caprese)

「米自動車保険業界にとって、時代は厳しい。自動車衝突事故の件数は新型コロナウイルス禍前の水準に戻りつつあり、過去最高水準の修理費、修理工場での歴史的に長い待ち時間、交換部品の入手制限が相まって、事故後の自動車の修理にこれまで以上に費用と時間がかかっている」――J.D. パワー 2022年米国自動車保険事故対応満足度調査℠で、そのような状況が浮き彫りとなった。

米ミシガン州トロイに本社を置くJ.D. パワーは、消費者のインサイトやアドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーである。50年以上にわたり、ビッグデータやAI(人工知能)、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する情報を提供している。

本調査では、自動車保険会社の事故対応に対する不満が高まっていることが明らかになった。顧客満足度は顧客の事故対応プロセスに対する寛容度が低下し始めたことから、2021年から7ポイント低下した(1,000ポイント満点)。

今回は、J.D. パワー 2022年米国自動車保険事故対応満足度調査℠の概要を紹介したい。

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J.D. パワー 2022年米国自動車保険事故対応満足度調査℠

歴史的に遅い修理プロセスが顧客満足度に影を落とす

自動車保険の請求プロセスに対する2022年の総合満足度は、前年より7ポイント低下し873ポイントとなった(1,000ポイント満点)。ほぼすべてのファクターで満足度が低下し、特に「修理プロセス」に対する満足度は前年比で9ポイント低下した。

今回初めて、自動車の修理が遅れる理由として、過半数の顧客が、注文した部品の待ち時間や修理工場での待ち時間の長さといった「サプライチェーンの問題」を挙げた。修理期間の平均日数は、新型コロナウイルス禍前の約12日から約17日に増加した。

顧客の期待値コントロールが顧客満足度向上への鍵

修理期間が3週間を超えた顧客の総合満足度の平均スコアは837ポイントであった。ただし、事前に修理期間を的確に提示した場合にはこのスコアは71ポイント増加の908ポイントへと大幅に向上した。

特に、質問があったり、最新情報が必要であったり、次のステップを決めようとしたりするなど、顧客がより多くの労力を必要とする長期間の保険金請求に対しては、プロセス全体を通じて親身に対応することが重要となる。

保険金請求対応は一律ではない

修理費の高騰は保険会社の収益性を圧迫しており、コスト管理を強化する必要性が高まっている。このため、顧客との関係を効率的に管理するための重要なツールとして、デジタルチャネルが注目されているが、すべての顧客がそのようなチャネルの利用を望んでいるわけではない。

実際、顧客の34%は、デジタルチャネルを利用するよりも対人チャネルを強く希望すると回答した。このような顧客は、対人とデジタルの両チャネルを同じように使いこなすことができる顧客と比較し満足度が31ポイント低く、顧客体験が著しく悪化している。

デジタルチャネルの正しい使い方の理解は重要だが容易ではない

もちろん、すべてのデジタル体験が同じように作られるわけではない。たとえば、デジタルチャネルを使って「事故対応の状況報告」をした場合、総合満足度は56ポイント上昇し、特にテキストメッセージを使った場合に満足度が最も高くなった。

しかし、「最初の損害発生通知(FNOL)の報告」の際に、インターネットやモバイルアプリといったデジタルチャネルが用いられた場合、総合満足度は4ポイント低下した。このことは、デジタルチャネルの正しい使い方の理解は重要だが容易ではないことを示唆している。

担当者間の連携が重要

自動車保険の請求プロセスにおいてよく生じる不満は、さまざまな段階で異なる担当者に同じ情報を繰り返し提供する必要があることである。保険金請求のプロセスで3人以上の担当者とやり取りをした場合、総合満足度は最も低く(840ポイント)、前年比で13ポイント低下した。保険会社がSTP(ストレート・スルー・プロセッシング)(※1)を使って自動的に保険金請求の承認手続きを行っている場合、満足度スコアは最も高く(912ポイント)、前年から横ばいで推移している。

用語解説

(※1)保険金請求の一連の過程が、人手を介さないですべて電子的なネットワークを通じて行われること。

顧客満足度ランキング 第1位はAmica Mutual(アミカ)

なお、本調査の顧客満足度ランキングの上位3社は以下の通りとなった。

第1位:Amica Mutual(アミカ)(903ポイント)
第2位:NJM Insurance Co.(NJM)(896ポイント)
第3位:Erie Insurance(エリー)(893ポイント)

保険会社は窮地に立たされている

J.D. パワー グローバル・インシュアランス・インテリジェンス部門のディレクターのマーク・ギャレット氏は、今回の調査結果について「保険会社は、収益性のひっ迫に加え、さまざまな外的要因により保険金請求の体験全体に対して顧客がますます幻滅していることにより、窮地に立たされている。保険会社の今後の方針として最善なのは、請求プロセスを通じて顧客を導く際に、顧客の期待値を慎重にコントロールし、デジタル・エンゲージメント戦略の微調整に注力することである」と指摘。さらにギャレット氏は「本調査の中で一つだけ良い結果がある。それは、タイミングへの期待をコントロールし、顧客に迅速に対応し、かつ修理状況の更新に複数のデジタルチャネルを提供している保険会社は業界平均を上回る成果を上げており、中には前年比で改善している会社もあるということである」とコメントしている。■

(La Caprese 編集部)

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