2023年9月15日、東京証券取引所でトヨタ自動車の株価が一時2,842円まで買われ、上場来高値を更新した。今年3月20日の安値1,764円から6カ月足らずで61.1%の上昇である。
トヨタ自動車は、愛知県豊田市に本社を置く自動車メーカーの最大手である。トヨタ自動車の2022年の自動車販売台数は、グループ全体(ダイハツ工業と日野自動車を含む)で1,048万台余りと、3年連続で世界トップとなった。また、ロンドンに本拠を置くブランディング専門会社のインターブランドが発表した国際的なブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2022」では、トヨタ自動車の企業ブランド力は全世界で第6位と評価されている。
トヨタ自動車は、①今年6月にEV(電気自動車)の性能向上に向けて「全固体電池」と呼ばれる次世代型の電池を2027~2028年に実用化する方針を示したことに加え、②8月には、2023年9月~11月の車両生産計画にて、世界生産を前年同期比10%増の274万台程度に設定し、そのうち国内生産を26%増の計94万台程度と大幅に増産する計画を示したこと、③2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績が大幅な増収増益となり、四半期ベースの営業利益としては日本企業初の1兆円の大台に乗せたこと(詳細は後述)、④9月14日にトヨタ系自動車部品大手のアイシンが中期経営計画を発表し、将来的に政策保有株式をゼロとする方針を明示したことから、他のトヨタ系企業も資本効率の向上につながる施策を推進するのではないか、との思惑が広がったこと、⑤為替の円安進行……等が株価にも追い風となった。
今回はトヨタ自動車の話題をお届けしよう。
トヨタ自動車、営業利益は93.7%増
8月1日、トヨタ自動車は2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績を発表した。同期の営業収益は前年同期比24.2%増の10兆5,468億円、本業の利益を示す営業利益は同93.7%増の1兆1,209億円、税引前利益は同68.4%増の1兆7,205億円、最終利益は同78.0%増の1兆3,113億円と大幅な増収増益となった。また、同期は日本企業としては初めて四半期ベースの営業利益で1兆円の大台に乗せた。
同期の連結販売台数は前年同期比15.5%増の232万6,000台となった。同期は新型コロナウイルス禍で長らく続いた半導体の供給不足の改善に加え、仕入れ先とともに進めてきた生産性向上活動により、全ての地域で販売台数が増加した。また、その過程で、電動車の販売もHEV(電気式ハイブリッド車)を中心に着実に増加し、全体の34.2%となった。
販売台数の増加や価格改定、為替の円安等が寄与
営業利益の増減要因については、まず、為替変動の影響により1,150億円の増益となった。一方で、原価改善の努力は、資材高騰の影響もあり1,550億円の減益となった。また、営業面の努力として、販売台数の増加や構成の改善、海外を中心とした価格改定により6,000億円の増益となった。諸経費の増減・低減努力については、労務費やデジタル化などへの投資が増加し700億円の減益であった。その他、スワップ評価損益などにより522億円の増益となった。この結果、為替変動・スワップ評価損益などの影響を除いた営業利益は3,750億円の増益となった。
地域別では、まず、北米は半導体の需給改善と仕入先を含めた生産性向上活動による販売台数の増加、商品力に応じた価格改定により、増益となった。日本や欧州、その他地域についても、半導体の需給改善や好調な販売に支えられて軒並み増益を記録した。一方、アジアは減益となったが、中国を除くアジア地域としては販売台数の増加により増益となった。
なお、中国事業については、子会社の営業利益、持分法適用会社の持分法による投資損益がともに減益となった。これは、主に為替変動の影響や激しい価格競争により販売費が増えたためである。ただ、ローカルブランドの台頭により競合環境は厳しさを増しているものの、トヨタ・レクサスの販売台数は着実に増加している。
日本企業初の営業利益3兆円台へ
8月1日、トヨタ自動車は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、営業収益で前期比2.3%増の38兆円、本業の利益を示す営業利益で同10.1%増の3兆円、税引前利益で同0.6%増の3兆6,900億円、最終利益で5.3%増の2兆5,800億円と従来見通し(5月10日公表)を据え置いた。見立て通りとなれば、営業収益で3期連続の過去最高となるほか、営業利益は通期として2年ぶりの最高益を更新することとなる。なお、通期の営業利益3兆円台が実現すると、日本企業として初めてのこととなる。
冒頭でも述べた通り、9月14日にはトヨタ系自動車部品大手のアイシンが中期経営計画を発表し、将来的に政策保有株式をゼロとする方針を明示した。株式市場では他のトヨタ系企業も資本効率の向上につながる施策を推進するのではないか、との思惑が広がっている点も気になるところだ。引き続きトヨタ自動車と関連企業の業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)