2023年5月19日、東京証券取引所でゼンショーホールディングスの株価が一時5,640円まで買われ、株式分割を考慮したベースで上場来高値を更新した。今年1月4日の安値3,215円から4カ月半で75.4%の上昇である。
ゼンショーホールディングスは、外食チェーンやスーパーマーケット等を多数傘下に置く持株会社である。傘下には牛丼チェーンの「すき家」を筆頭に、うどんや丼物などを提供する「なか卯」、ステーキやハンバーグメインのファミリーレストランを展開する「ビッグボーイジャパン」、ファミリーレストランやメキシカンレストランを展開する「ココスジャパン」、回転寿司を展開する「はま寿司」などがある。M&Aによる事業展開に積極的な企業であり、最近では2023年2月16日に100%完全子会社のゼンショーファストホールディングスが、ロッテホールディングとの間で、ロッテリアの全株式を取得する株式譲渡契約を締結して話題を呼んだ。
後段で述べる通り、ゼンショーホールディングスが5月12日に発表した①2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績で営業利益が過去最高を記録したことに加え、②2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想についても、営業利益が2年連続で過去最高となる見通しが示されたこと、③2024年3月期の年間配当は前期比16円増の40円に増配する方針を示したこと……などが刺激材料となった。
今回はゼンショーホールディングスの話題をお届けしよう。
ゼンショーホールディングス、営業利益が11年ぶり過去最高
5月12日、ゼンショーホールディングスは2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前期比18.4%増の7,799億6,400万円、本業の利益を示す営業利益は同135.4%増の217億3,400万円、経常利益は同21.5%増の280億8,100万円、純利益は同4.4%減の132億6,500万円となった。
同期は、「すき家」をはじめとする牛丼カテゴリーの既存店売上高が前年比で9.5%増、「ココス」や「ジョリーパスタ」をはじめとするレストランカテゴリーの既存店売上高は同31.0%増、「はま寿司」をはじめとするファストフードカテゴリーの既存店売上高は同20.9%増といずれも好調に推移した。その結果、上記の通り営業利益は前期比135.4%増の217億3,400万円となり、11年ぶりの過去最高益を記録した。一方で、純利益は時短営業への協力金などが減少したことが響き、前期比で4.0%減少した。ちなみに、同期の店舗数は444店舗を出店する一方で248店舗退店した結果、1万283店舗(FC 4,588店舗を含む)となった。
セグメント別の概況は以下の通りである。
外食事業、営業利益は157.6%増
「外食事業」のセグメントは、売上高が前期比21.2%増の7,017億3,100万円、営業利益は同157.6%増の240億2,800万円となった。
牛丼カテゴリーでは、「すき家」にて「白髪ねぎ牛丼(並盛580円)」や「ニンニクの芽牛丼(同550円)」のほか、「すきやき牛丼(同580円)」「炭火焼きほろほろチキンカレー(同690円)」等の新商品を導入した。ちなみに、同期はさまざまなコストが上昇する中、2023年2月22日に一部商品において価格改定を実施したが、主力商品である牛丼並盛は企業努力により価格を据え置いた。また、京風うどんや丼物の「なか卯」は既存商品のブラッシュアップによる強化などを積極的に推進した。
レストランカテゴリーでは、ファミリーレストランの「ココス」にてフェアメニューの積極的な導入による商品の強化、専門店にも負けない本格的な味の追求、消費者が満足できるようサービス水準の向上を図り、業績の向上に努めた。パスタ専門店の「ジョリーパスタ」では、「おいしさと楽しさを追求するパスタ専門店」として旬の食材を活かしたパスタの新商品投入や手作りピッツァ、サラダ、前菜などパスタ以外の商品拡充も推進した。なお、レストランカテゴリーには、このほか、ハンバーグ&ステーキレストランの「ビッグボーイ」や、焼肉チェーン店の「熟成焼肉いちばん」、和食レストランの「華屋与兵衛」、本格イタリア料理専門店の「オリーブの丘」等が含まれている。
ファストフードカテゴリーでは、100円寿司チェーンの「はま寿司」にて積極的なフェアメニューの導入や商品クオリティーの強化と生産性の向上に努めた。ファストフードカテゴリーには、このほか、武蔵野うどん・天ぷらを提供する「久兵衛屋」や、マレーシアを中心に展開するハラル認証を取得したチキンライス専門店の「The Chicken Rice Shop」等が含まれている。
小売事業は営業損失が拡大
一方、「小売事業」のカテゴリーは、売上高が前期比1.7%減の782億3,200万円、営業損失は22億9,400万円(前期は9,300万円の営業損失)となった。「小売事業」のセグメントは、スーパーマーケット事業を展開する「ジョイマート」および青果販売等の「ユナイテッドベジーズ」などで構成しているが、同期は営業損失が拡大するなど苦しい展開となった。
2024年3月期は、営業利益で2年連続の過去最高を予想
5月12日、ゼンショーホールディングスは2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比15.2%増の8,984億6,600万円、本業の利益を示す営業利益で同84.5%増の400億9,000万円、経常利益で同33.2%増の373億9,500万円、純利益で同73.4%増の230億300万円となる見通しを示した。見立て通りとなれば、営業利益で2年連続の過去最高を更新することになる。
ゼンショーホールディングスは、2024年3月期の経営環境について、ウクライナ情勢の長期化や各国の経済活動回復に伴うエネルギーコスト・原材料価格の変動が見込まれるほか、食材安定供給への不安など、引き続き不透明を残す一方で、国内外食事業では、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の緩和や、企業の賃上げにより消費活動の回復も期待されるとの認識を示した。このような環境下、ゼンショーホールディングスは「食のインフラ」として消費者に安全で美味しい食を持続的に提供できるよう、また変化する消費者の消費行動や価値観を踏まえた商品・サービスを提供できるよう、食材調達から製造・物流・店舗販売まで一貫して設計・運営を行うマス・マーチャンダイジング・システム(MMD)をより強化する意向を示した。
なお、冒頭でも述べた通り、ゼンショーホールディングスは2024年3月期の年間配当について前期比16円増の40円に増配する方針を示した。
引き続き、ゼンショーホールディングスの業績や株価が注目されるところである。■
(La Caprese 編集部)