2022年9月30日の東京株式市場で、スナック菓子大手のカルビーの株価が一時3,115円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年4月25日に記録した年初来の安値2,265円から約5カ月で37.5%の上昇である。
上昇のきっかけとなったのは9月12日のことだった。同日、SMBC日興証券がカルビーの投資判断を「2」から「1」に格上げ、目標株価も2,200円から3,400円に引き上げた。これを受けて翌9月13日のカルビー株は前日比で一時5.2%高の2,907円をつける場面もみられた。その後も適度な上下動を繰り返しながらも水準を切り上げ、9月30日には3,000円の大台を回復している。
今回はカルビーの業績をみてみよう。
カルビー、増収減益ながら計画を上回る
2022年8月2日、カルビーは2023年3月期・第1四半期(2022年4月1日~2022年6月30日)の連結業績を発表した。売上高は前年同期に比べて9.1%増の653億円、本業の利益を示す営業利益は同22.7%減の54億円、経常利益は1.1%減の70億円、純利益は8.1%減の46億円となった。
同期は2021年の高温・干ばつに起因した北海道産ばれいしょの収量不足による販促活動の抑制や、製品発売スケジュールの見直しがマイナスに作用する一方で、新型コロナウイルス禍の社会経済活動の正常化に向けた行動制限緩和などを背景に、コンビニエンスストア向けや土産用製品の売上高が回復した。また、海外事業の売上高は北米の豆系スナック「Harvest Snaps」の拡販や、中華圏のロックダウン解除に伴う経済活動の再開を背景にいずれも好調だった(詳細は後述)。
一方、営業利益は国内・海外における価格・規格改定効果や増収効果がみられる一方で、食油や輸入ばれいしょ等の原材料費や動力費の高騰によるマイナスを吸収できず、前年同期比で22.7%減となった。また、経常利益は為替差益の計上で同1.1%減となったほか、純利益は8.1%減となった。
上記の通り、2023年3月期・第1四半期は増収減益であった。とはいえ、計画比では売上高が4.9%上回ったほか、営業利益は5.2%、経常利益は39.7%、純利益は46.9%とそれぞれ計画を上回るなど改善傾向を示した。
国内はポテトチップスが伸び悩む一方で、じゃがりこは好調
セグメント別では、国内食品製造販売事業の売上高が前年同期に比べて3.8増の482億3,300万円となった。
国内スナック菓子では、ポテトチップスが2022年1月からの価格・規格改定実施後も高い需要が維持されたものの、北海道産ばれいしょの収量減による販促活動の抑制期間が長期化したことや、一部製品の発売スケジュールの見直しがマイナスに作用した。その結果、前年同期に比べて0.8%減の194億4,000万円となった。
一方、「じゃがりこ」は行動制限の緩和により外出先での需要が高まった。特にコンビニエンスストアでのLサイズや期間限定品が好調に推移し、前年同期比5.7%増の95億3,600万円となった。また、コーン系・豆系スナックも新製品投入の効果などにより売上に寄与した。さらに「じゃがポックル」などの土産用製品も好調だった。国内旅行需要の回復基調や、催事や物産展への積極的な展開が功を奏した。
国内シリアル食品の売上高は前年同期並み(前年同期比0.3%増の66億4,800万円)だった。子供向け製品が伸び悩む一方で、オートミール需要の高まりに対応した新製品「ベイクドオーツ」の投入と台湾向けの輸出製品が伸長した。
北米の売上高が40.6%増、中華圏も絶好調
注目されるのは海外食品製造販売事業だ。同セグメントの売上高は前年同期に比べて27.2%増の170億9,000万円と急増した。
北米では大手顧客やスーパー、ダラーストア業態において豆系スナック菓子「Harvest Snaps」の売上高が拡大したほか、エスニック食品売り場向けの「じゃがりこ」などのスナック菓子が伸長した。その結果、北米の売上高は前年同期比40.6%増の55億8,800万円と急増した。
中華圏も前年同期比34.2%増の56億3,700万円と好調だった。中華圏ではスナック菓子やシリアル食品ともに伸長した。スナック菓子は「Honey Butter Chip」や「Jagabee」がeコマース、小売店舗向けともに好調に推移。シリアル食品も「フルグラ糖質オフ」の売上高が拡大した。
このほか、英国やインドネシアも前年同期に比べて増収となった。英国においては、価格・規格改定を実施したポテトチップスのスーパーへの配荷拡大などにより、売上が伸長した。インドネシアもポテトチップスの売上高が伸長したほか、4層構造のスナック菓子「Guribee」も好調に推移した。
原材料費や動力費の高騰などマイナス要因も
さて、今回はカルビーの業績をみてきたが、いかがだろうか? 増収減益とはいえ計画比では売上高、各利益ともに上回るなど改善傾向が見られるのは評価ポイントといえそうだ。海外食品製造販売事業が大幅な伸びを示している点も今後に期待を抱かせる要因である。また、冒頭で述べたように国内大手証券の投資判断の引き上げも人気を後押しする一因だ。
とはいえ、原材料費や動力費の高騰によるマイナス要因も引き続き気になるところである。今後、これらマイナス要因が解消されるのか注意深く見守る必要もありそうだ。■
(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)