2023年3月8日、東京証券取引所でしまむらの株価が一時1万3,450円まで買われ、昨年来の高値を更新した。2022年1月7日の安値9,450円から1 年2カ月で42.3%の上昇である。
しまむらは、ファストファッションブランドを中心に衣料品チェーンストアを展開する企業である。主力のしまむらを筆頭に、アベイル、バースデイ、シャンブル、ディバロなど多数のブランドを全国展開しているほか、台湾など海外へも進出している。しまむらで購入したファッションで全身をコーディネートした人を「しまラー」と呼ぶ流行語を生んだほか、しまむらの商品画像をインスタグラムで拡散する「しまパト」と呼ばれる現象も起きている。
後段で述べる通り、2023年2月期・第3四半期(2022年2月21日~2022年11月20日)の増収増益に加えて、2023年2月の既存店売上高も5カ月連続のプラスを記録するなど業績は好調だ。今回はしまむらの話題をお届けしよう。
しまむら、営業利益は14.9%増
しまむらが公表した2023年2月期・第3四半期(2022年2月21日~2022年11月20日)の連結業績は、売上高が前年同期比6.2%増の4,639億300万円、本業の利益を示す営業利益は同14.9%増の445億4,700万円、経常利益は同14.6%増の455億2,700万円、純利益は同17.8%増の317億1,100万円と増収増益となった。
しまむらが展開する事業別の概況は以下の通りである。
しまむら事業、「ブランド力の進化」を見据えた施策を推進
主力のしまむら事業は、ブランド力の進化のため、PB(自社開発ブランド)とサプライヤーとのJB(共同開発ブランド)の品揃えを拡充した。
PBは冬物のニットや肌着、インテリアが好調で、高価格帯の「CLOSSHI PREMIUM」は肌着や寝具での展開を拡大し売上を伸ばした。また、コーディネート提案を強化したJBや旬のインフルエンサー企画、人気のキャラクター商品も好調だった。
一方、在庫管理では、都市部と郊外、寒冷地域と温暖地域など、さまざまな店舗立地に応じて適切な商品管理を実施した。また、広告宣伝では、動画CMのWeb配信などデジタル広告を拡大し、大感謝祭など重点催事のチラシ販促を強化したことで客数が増加した。店舗別対応では都市部限定チラシの取組み強化で該当店舗の売上が伸長した。
アベイル事業、共同開発ブランドとキャラクター商品が好調
アベイル事業は、JBとキャラクター商品が売上を伸ばした。メンズはレディースサプライヤーの活用でニットなどのトレンド商品が売れ筋となったほか、レディースではJBの重点販売商品を定めてチラシ販促を強化し、ローティーン企画などの新企画の拡大が功を奏し、好調に推移した。
一方、服飾雑貨もブーツやバッグ、帽子が外出需要の高まりで好調だった。また、インテリア・生活雑貨もキャラクター商品を中心に品揃えと売場の拡大が功を奏し、好調に推移した。
バースデイ事業、インフルエンサーの活用など販促手法を多様化
バースデイ事業はJBの拡充に務めた。具体的には、新生児向けJBの「Cottoli(コトリ)」のギフト提案を強化したほか、ジュニア向けJBの「rabyraby(ラビラビ)」ではトレンド商品を拡大して売上を伸ばした。また、外出需要の高まりもあって、ベビーカーやチャイルドシート、ランチグッズも好調だった。
一方、販促ではインフルエンサーの活用や新規販促媒体による産院向け広告の強化など、販促手法を多様化して新規顧客の獲得に取り組んだ。
シャンブル事業、外出需要の高まりで売上を伸ばす
シャンブル事業は、ブランディングを強化したアウター衣料のJBが順調に推移した。特に外出需要の高まりにより、バッグや帽子、アームカバーなどの服飾雑貨のほか、コスメやフレグランスなどの雑貨も売上を伸ばした。
一方、キャラクター商品は世代を超えた客層の広い新規キャラクターの開拓に努めた結果、好調に推移した。また、イベント需要の回復でクリスマス雑貨が売上を伸ばし、クリスマス限定のラッピング資材がギフト向け商品の販売に寄与した。
ディバロ事業、シューズ全般に好調
ディバロ事業は、外出需要の高まりでシューズ全般が好調に推移した。レディースではパンプスとスニーカー、ブーツが売上を伸ばした。メンズはスニーカーとビジネス、キッズはスニーカーとブーツがそれぞれ好調だった。
一方、取扱いを拡大したアウター衣料と服飾雑貨もトレンド商品の強化や新規サプライヤーの開拓で売上を伸ばした。また、販促ではSNS配信の回数増加と媒体の種類拡大が、SNS会員数の大幅な増加に寄与した。
思夢樂事業、自社開発ブランドと共同開発ブランドが順調に推移
台湾で事業展開する思夢樂事業は、2022年9月の2度の台風による大雨に加え、10月と11月は各地で連日30℃を超す真夏日を記録するなど、厳しい天候が続いたことで秋冬物の販売が伸び悩んだ。しかし、その一方で取扱いを拡大したPBやJBは順調に推移し、販促手法の多様化によりSNSの閲覧数が大きく伸長した。
2月度の既存店売上高は12.2%の増加
しまむらは、2023年2月期(2022年2月21日~2023年2月20日)の連結業績予想について、売上高で前期比3.9%増の6,066億800万円、本業の利益を示す営業利益で同5.3%増の520億5,800万円、経常利益で同4.8%増の529億9,800万円、純利益で同5.0%増の371万9,700万円と従来見通し(2022年4月4日公表)を据え置いている。
ちなみに、2023年2月度(2023年1月21日〜2023年2月20日)の既存店売上高は前年同月比で12.2%増、全店で11.8%増とそれぞれ5カ月連続のプラスを記録するとともに、昨年10月以来の2ケタの伸びを示すなど好調に推移している。2月度は全国的な冷え込みにより、婦人・紳士のアウター衣料でPB「CLOSSHI」のニットや裏起毛素材のパンツ、ジャケットやコートなどが好調に推移。また、冬物の肌着や靴下の実用商品も売上を伸ばしたほか、2月下旬には長袖のシャツやTシャツ、デニムパンツなどの春物新作アイテムも好調だった。
しまむらは、再来週の3月23日に2023年3月度の売上速報の発表を予定しており、ここで既存店売上高等が引き続き好調な数字を示すか注目される。さらに気になるのは、4月3日の発表を予定している2023年2月期(2022年2月21日~2023年2月20日)の連結業績である。ここで前述の予想に対してどのような業績が示されるのか、あるいは来期(2024年2月期)についてどのような連結業績予想が提示されるのか注目しておきたい。■
(La Caprese 編集部)