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エッセイ:サウジ政府系ファンドが任天堂の株式を買い増し。ムハンマド皇太子の「脱石油」経済改革の一環か

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(画像= Canva、La Caprese)

2023年2月15日、サウジアラビアの政府系ファンドのPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)が、任天堂の株式を買い増していたことが明らかになった。PIFが同日付で関東財務局に提出した報告書によると、今年1月時点で任天堂の株式を6.07%取得していたが、今回の買い増しで7.08%になった。PIFは任天堂株の保有目的について、「純投資」としている。

サウジアラビアは近年、ゲーム業界への投資を積極的に進めている。2020年10〜12月には、PIFが米ゲームメーカーのエレクトロニック・アーツやアクティビジョン・ブリザード、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエアの3社に計30億ドル(約3,200億円)あまりを投資して話題になった。また、2020年11月にはサウジアラビアのムハンマド皇太子によって設立された「ミスク財団」の傘下企業のEGDC(エレクトロニック・ゲーミング・デベロップメント・カンパニー)が日本のゲームメーカであるSNKの3分の1の株式を取得した。その後、EGDCはSNKの株式を2022年4月時点で96.18%まで買い増している。

PIFが任天堂の株式を保有していることが初めて明らかになったのは、2022年5月のことだった。2022年5月18日付で関東財務局に提出した大量保有報告書では、任天堂の株式を「純投資」を目的として5.01%(約651万株)保有していた。前述の通り、9カ月後の2023年2月15日には7.08%まで買い増している。

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ムハンマド皇太子、「脱石油」の経済改革を推進

ちなみに、ムハンマド皇太子によって設立された「ミスク財団」の傘下企業の一つに「マンガプロダクションズ」がある。マンガプロダクションズはアニメーションやビデオゲーム、コミックの制作および配給のほか、サウジアラビアの若者たちの才能を発掘し教育や研修を行うことを目的に設立した。クリエイティブコンテンツ業界への投資事業などにも取り組んでおり、2022年4月にはマンガプロダクションズと東映アニメーションの共同制作による、サウジアラビア初の長編アニメ映画『ジャーニー』を公開した。

『ジャーニー』はサウジアラビアの説話もとにした物語で、平和な街を巨大な侵略軍から守る男たちを中心とした様々な人間模様が展開される。監督は『名探偵コナン から紅の恋歌』や『GODZILLA 怪獣惑星』等の静野孔文氏、脚本は『ポケットモンスター』シリーズや『ドラゴンボール超』などの冨岡淳広氏、キャラクターデザインは『逆転裁判』シリーズなどの岩元辰郎氏、音楽は『犬夜叉』(2000年〜2004年)や『聖闘士星矢』(2009年)などを手がけた和田薫氏が担当した。

ムハンマド皇太子は日本のアニメやゲーム好きで知られている。石油に頼らない「脱石油」の経済改革を掲げ、それまで認められていなかった女性の社会進出を推進するなど「政治家」としての存在感を示し、2022年9月には首相に就任している。近年、アニメやゲームなど娯楽産業への投資や振興に力を入れているのも、「脱石油」の経済改革の一環とみられている。

サウジアラビアの「脱石油」改革とともに、アニメやゲーム関連の株価の動きも気になるところである。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

特集:オタク関連株
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