2023年2月14日、東京証券取引所で力の源ホールディングスの株価が一時1,400円まで買われ、昨年来の高値を更新した。2022年1月27日の安値512円から1年あまりで2.7倍に上昇した計算である。
力の源ホールディングスは、ラーメン店チェーンの「博多一風堂」をはじめとする外食産業を営む力の源カンパニーを傘下に置く持株会社である。主力となる博多一風堂等は世界各国で展開しており、セグメント別では「海外店舗運営事業」が店舗数や業績で「国内店舗運営事業」と肩を並べる規模に成長している。後段で詳述する通り、今週2月14日に発表した2023年3月期・第3四半期(2022年4月1日~2022年12月31日)の連結業績が大幅な増収増益となったことが株価にも追い風となった。
今回は力の源ホールディングスの話題をお届けしよう。
力の源ホールディングス、純利益は795.5%増
今週2月14日、力の源ホールディングスは2023年3月期・第3四半期(2022年4月1日~2022年12月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期に比べて33.3%増加の188億3,400万円、本業の利益を示す営業利益は同159.8%増の15億6,100万円、経常利益は同168.7%増の16億900万円、純利益は同795.5%増の12億100万円と大幅な増収増益となった。
同期は、国内において新規に14店舗を出店し、さらに植物由来の原材料のみを使用するプラントベース商品をレギュラーメニューとした一風堂新宿ルミネエスト店をリニューアルオープンした。加えて、新型コロナウイルス禍の入国規制の緩和に伴って、2022年4月より一風堂成田空港店の営業を再開した。その一方で不採算店舗を12店舗閉店した。また、国内および海外店舗において、モバイルオーダーやタブレットオーダーの導入等、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することでコストを削減したほか、季節商品や地域限定商品の提供に注力したことが、売上増加をもたらした。同時に、原材料およびエネルギー価格の上昇への対応として、価格改定を実施し、利益確保に努めた。
海外においては、新型コロナウイルス禍の規制緩和後の客数の回復が国内に比べて早かったことに加え、前述の施策効果、為替の円安進行の影響等により、大幅な増収増益となった。
ちなみに、同期末の店舗数はライセンス形態での展開を含め、グループ合計で282店舗(国内145店舗、海外137店舗、前期末比5店舗増)となった。
海外事業が絶好調。国内事業も増収増益
なお、セグメント別の状況は以下の通りである。
「国内店舗運営事業」は増収増益
同期の「国内店舗運営事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて7.1%増加の84億4,100万円、セグメント利益は同18.7%増の4億9,000万円と増収増益となった。
「国内店舗運営事業」では、「一風堂」ブランドにおいて13店舗、「因幡うどん」ブランドにおいて1店舗出店した一方で、「一風堂」ブランドにおいて7店舗、「RAMEN EXPRESS」ブランドにおいて2店舗、「名島亭」ブランドにおいて2店舗、「因幡うどん」ブランドにおいて1店舗閉店した。その結果、同期末の店舗数は145店舗(前期末比2店舗増)となった。なお「RAMEN EXPRESS」2店舗については、「一風堂」への業態変更を行った。
2022年3月以降は、新型コロナウイルス禍の営業時間短縮等の規制がなかったものの、7月下旬から8月末にかけての感染者数の増加や、夜間並びに深夜時間帯の客足が充分に回復していないことから、売上は緩やかな回復に留まった。このような状況下、前述の通り、新規に14店舗を出店したほか、不採算店舗の「戦略的閉店」を12店舗行った。加えて、モバイルオーダーおよび卓上タブレットオーダー、食券機の導入による生産性向上も増収増益に寄与した。
「海外店舗運営事業」のセグメント利益は392.1%増
一方、「海外店舗運営事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて80.0%増加の81億3,800万円、セグメント利益は同392.1%増の9億5,000万円と大幅な増収増益となった。
同期の「海外店舗運営事業」は、シンガポールに1店舗、オーストラリアに3店舗、台湾に2店舗、タイに2店舗、インドネシアに2店舗、マレーシアに1店舗出店した一方で、米国で1店舗、中国で6店舗、フィリピンで1店舗閉店した。その結果、同期末の店舗数は137店舗(前期末比3店舗増)となった。
2022年は新型コロナウイルスの感染拡大により、1月と2月に米国とオーストラリアで、4月と5月に台湾で客数減少がみられたものの、その後は急速な回復傾向を示し、売上は好調に推移した。とはいえ、全世界的な原材料価格の高騰や、賃金・物流費の上昇等、コスト面において様々な対応が求められた。このような状況のもと、提供商品の見直し、人財ディプロイメントの再構築、DX施策の導入等で、各地域の店舗運営体制の抜本的な見直しを実施した。その結果、上記の通り、大幅な増収増益となった。
「商品販売事業」は一風堂関連商品の売上強化策等が奏功
「商品販売事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて30.8%増加の22億5,500万円、セグメント利益は同56.3%増の3億5,500万円となった。
同期の「商品販売事業」は、国内の主力である一風堂関連商品の売上を強化すべく、一風堂チルド麺の導入や、新商品投入による商品ラインナップの充実、自社ECサイトにおける販促施策・小売事業者への営業に注力した。また、海外では「プラントベース白丸・赤丸」乾麺タイプの拡販に努めた結果、販売が好調に推移した。
通期見通しは従来予想を据え置き
力の源ホールディングスは、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比26.3%増加の245億円、本業の利益を示す営業利益で同62.8%増の17億1,000万円、経常利益で同68.9%増の18億3,000万円、純利益で同46.2%増の13億5,000万円と従来予想(2022年11月14日公表)を据え置いた。
ただし、2023年3月期・第3四半期(2022年4月1日~2022年12月31日)の進捗率は売上高で76.9%、営業利益で91.3%、経常利益で87.9%、純利益で89.0%に達している。今後の状況によっては、上振れの可能性もないとはいえないので、引き続き注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)