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なぜ、三越伊勢丹の株価は年初来の高値を更新したのか?

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(画像= ぽせ〜どん / 写真AC、La Caprese)

2022年9月9日、百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹)の株価が一時1,198円まで買われ、年初来の高値を更新した。1月11日に記録した年初来安値827円から9カ月で44.9%の上昇である。直近1カ月のパフォーマンス(9月8日時点)をみると、日経平均株価のプラス1.4%に対し、三越伊勢丹はプラス17.8%と大きくアウトパフォームするなど存在感を強めている。

実際、この1カ月は三越伊勢丹の株価に追い風となるニュースが相次いだ。後段で述べる通り、2023年3月期・第1四半期(2022年4〜6月期)決算の黒字化、8月の既存店売上高(速報値)の大幅増収、政府の入国制限緩和などを後ろ盾に、この1カ月の三越伊勢丹株は右肩上がりのトレンドを描いている。

三越伊勢丹など百貨店大手は新型コロナ禍で苦戦を強いられていたが、ここにきて復活の可能性が広がっているようだ。今回は三越伊勢丹の話題を紹介したい。

三越伊勢丹、最終損益で3年ぶりの黒字転換

8月1日、三越伊勢丹は2023年3月期・第1四半期(2022年4〜6月期)決算を発表した。売上高が前年同期比14.7%増の1,016億円、営業損益は39億6,500万円の黒字で前年同期の赤字(60億2,700万円の赤字)から大幅な黒字転換となった。最終損益も56億5,200万円の黒字で、同期としては3年ぶりの黒字となった。

セグメント別では主力の百貨店業の売上高が前年同期比18.3%増の917億円、営業損益は19億円の黒字(前年同期は82億円の赤字)と絶好調だった。今年3月にまん延防止等重点措置が解除されて以降、全国各地の人流回復に加え、昨年の臨時休業等の反動もあり、ラグジュアリーブランドや宝飾品、衣料品等を中心に売上高が大きく伸長した。また、伊勢丹新宿本店では4月の売上高が、三越伊勢丹の統合後最高を記録した。インバウンドが回復していない状況で最高売上を記録し、業績全体に寄与した。

三越伊勢丹は2023年3月期(通期)の見通しについて、連結純利益で前期比54.0%増の190億円になる見通しを示した。これは従来予想を20億円上回る大幅な上方修正である。売上高は18.0%増の4,940億円と従来予想を据え置いたが、営業利益は2.9倍の170億円と従来予想から30億円上方修正した。地代家賃や人件費、アルバイトなどの削減が想定を上回るペースで進む見通しであるが、業績に連動した経費コントロールを柔軟かつ機動的に対応する構えだ。

既存店売上高も好調、インバウンド回復への期待も?

ちなみに、三越伊勢丹が9月1日に公表した8月の既存店売上高(速報値)は 前年同月比で46.5%増で、12カ月連続で前年実績を上回った。宝飾品や腕時計など高額品の販売が引き続き好調で、売上高全体のけん引役となった。特に伊勢丹新宿本店は5カ月連続で「コロナ前」の2019年の同月実績を上回るなど絶好調だった。

政府の水際対策緩和も三越伊勢丹には朗報だ。政府は新型コロナの水際対策で9月7日から、1日当たりの入国者数の上限を2万人から5万人に引き上げるとともに、すべての入国者に求めていた陰性証明書を「3回目のワクチン接種」を条件に免除した。

岸田文雄総理大臣は同日の記者会見で「G7(主要7か国)並みの円滑な入国が可能となるよう、内外の感染状況やニーズ、また世界各国の水際対策を勘案しながら、さらに緩和を進めていきたい」と述べており、今後さらなる入国者数の上限引き上げや、外国人の受け入れ条件の緩和を検討する方針だ。

前述の通り、伊勢丹新宿本店ではインバウンドが回復していない状況にありながら、4月の売上高が統合後最高を記録した。今後、インバウンドが本格的に回復してくればさらなる売上増加も「期待」できるかもしれない。株式市場はすでにそうした「期待」を織り込みはじめているようにも見受けられる。

三越伊勢丹の業績と株価に引き続き注目しておきたい。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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