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グンゼ、株価は年初来高値。時代の荒波を生き抜いた「試行錯誤と挑戦」の企業

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※画像はイメージです。(画像= 夏男 / 写真AC、La Caprese)

2023年11月13日、東京証券取引所でグンゼの株価が一時4,855円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月16日の安値4,025円から10カ月で20.6%の上昇である。

グンゼといえば、肌着メーカーの老舗(しにせ)としてのイメージが強いかも知れない。だが、実は肌着以外の事業も積極的に展開している。たとえば、体内で溶ける医療用の糸といった最先端技術のほか、タッチパネル用のフィルム、さらにはペットボトルや食品の包装フィルム等も手がけている。1896年に京都で生糸事業を営む製糸メーカーとして創業したグンゼであったが、20世紀に入ると化学繊維の登場によって生糸は壊滅的な打撃を受ける。以来、グンゼの歴史は時代の荒波の中で生き抜くための「試行錯誤と挑戦の歴史」であり、そうした歴史の中で積み上げられた知見がグンゼの最大の強みと言えるのかも知れない。

さて、そのグンゼの株価であるが、後段で述べる通り、11月2日に公表した❶2024年3月期・第2四半期(2023年4月1日~2023年9月30日)の連結業績が最終増益となったことに加え、❷発行済み株式総数の2.49%にあたる取得総数43万株(取得総額20億円)を上限とする自社株買いの実施を発表したこと……が追い風となった。

今回はグンゼの話題をお届けしよう。

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グンゼ、最終利益は20.4%増

11月2日、グンゼは2024年3月期・第2四半期(2023年4月1日~2023年9月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比3.3%減の651億5,300万円、本業の利益を示す営業利益は同15.1%増の32億3,000万円、経常利益は同6.3%増の32億8,000万円、最終利益は同20.4%増の26億5,700万円となった。

同期の経営環境は、新型コロナウイルスの5類移行に伴う行動制限の緩和等により、社会経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな持ち直しの動きがみられた。しかし、その一方で為替の円安進行や海外経済の減速懸念、地政学的リスクを背景とした原材料・エネルギー価格の高騰に伴う物価上昇が続くなど、先行き不透明な状況が継続した。

グンゼはこうした経営環境の中、機能ソリューション事業にて物価上昇によるフィルム需要の減速や、原燃料高の影響を受けた。メディカル事業では、生体吸収性の新製品販売および中国における拡販が順調に進む一方で、医療用レーザーの販売は低迷した。アパレル事業は、販売回復が進む中で商品の高付加価値化を含めた価格改定が功を奏して収益性が改善した。また、ライフクリエイト事業は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和により増益となった。

その結果、上記の通り、売上高は前年同期を下回ったものの、営業利益・経常利益・最終利益はそれぞれ増益となった。

なお、セグメント別の概況は以下の通りである。

機能ソリューション事業

機能ソリューション事業の売上高は前年同期比2.4%減の242億5,100万円、営業利益は同5.7%減の29億3,700万円となった。

同期は、プラスチックフィルム分野で米国の包装用フィルムが堅調に推移したものの、国内・アジアでは需要停滞の影響を受けた。一方、エンジニアリングプラスチックス分野は、OA機器向けが停滞したものの、半導体および一般産業向けが堅調に推移した。電子部品分野は、中国向けタッチパネルが市況低迷の影響を受けた。

メディカル事業

メディカル事業の売上高は前年同期比2.5%減の54億9,200万円、営業利益は同15.8%減の9億700万円となった。

同期は新製品の癒着防止材や、中国向け製品が好調に推移したものの、コロナ後の美容医療機関の開院減少や設備投資抑制などにより、医療用レーザーの受注が減少した。

アパレル事業

アパレル事業の売上高は前年同期比2.4%減の293億7,300万円、営業利益は同305.9%増の7億7,500万円となった。

同期はEC・直営店ルートが伸長する一方で、量販店ルートが苦戦した。また、記録的な残暑による秋冬商品展開の遅れも響いた。引き続きDtoCシフトによる成長戦略と価格改定による利益改善に取り組む方針である。また、インナーウエア分野では顧客ニーズに対応した付加価値商品が好調に推移した。レッグウエア分野は、収益性の改善に向けた構造改革を継続的に進めている。

ライフクリエイト事業

ライフクリエイト事業の売上高は前年同期比10.4%減の64億2,800万円、営業利益は同49.4%増の2億9,700万円となった。

同期は、不動産関連分野で、前期の遊休地再開発プロジェクトによる売上計上により減収となった。一方、ショッピングセンター事業とスポーツクラブ分野は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和でともに回復傾向を示した。

時代の荒波を生き抜いた「試行錯誤と挑戦」の歴史

11月2日、グンゼは2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比2.9%増の1,400億円、本業の利益を示す営業利益で同29.0%増の75億円、経常利益で同24.6%増の75億円、最終利益で同6.6%増の48億円と従来予想(5月12日公表)を据え置いた。

なお、グンゼは同日に発行済み株式総数の2.49%にあたる取得総数43万株(取得総額20億円)を上限とする自社株買いの実施を発表した。取得期間は2023年11月6日から2024年3月22日である。グンゼは自社株買いの理由について、中期経営計画の財務戦略に基づく機動的な資本政策としている。

冒頭で述べた通り、グンゼの歴史は時代の荒波の中で生き抜くための「試行錯誤と挑戦の歴史」であったと言える。現状は、新型コロナウイルスの5類移行に伴う行動制限の緩和等により、社会経済活動の正常化が進む一方で、為替の円安進行や海外経済の減速懸念、地政学的リスクを背景とした原材料・エネルギー価格の高騰に伴う物価上昇が続くなど先行き不透明感は否めない。そのような環境下、グンゼがどのような経営の舵取りをするのか、株価の動きとともに注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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