グンゼ、業績改善への期待広がる!? 日銀の政策修正で、株価は年初来高値

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※画像はイメージです。(画像= kscz58ynk / 写真AC、La Caprese)

2022年12月27日、東京証券取引所でグンゼの株価が一時4,265円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年6月20日につけた年初来安値の3,575円から6カ月ほどで19.3%の上昇である。

グンゼは、肌着やインナー、ストッキング等を主とする大手繊維製品メーカーである。その源流は、1887年(明治20年)に波多野鶴吉氏が製糸業として創業した「羽室組」にまでさかのぼる。1896年には、羽室組を母体として「郡是製絲(ぐんぜせいし)」株式会社を設立。これが現在の社名の「グンゼ」の由来となっている。

後段で述べる通り、グンゼの2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績は増収減益であった。主力のアパレル事業の売上高は好調であったが、資源価格の高騰や為替の急激な円安を受けて原材料コストが急上昇し、利益を圧迫する典型的な「増収減益」となった。他方、日銀は12月19~20日の金融政策決定会合で、大規模緩和を修正する方針を決定した。従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大し、20日から適用した。この影響から為替市場では円高(ドル安)が進行したことから、グンゼの利益を圧迫していた原材料コストが低下し、収益性が改善するとの期待が広がったようだ。

今回はグンゼの業績をみてみよう。

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グンゼ、「アパレル事業」の増収減益が足カセに

11月2日、グンゼは2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期に比べて13.4%増の673億5,000万円、本業の利益を示す営業利益は同16.0%減の28億600万円、経常利益は同18.1%減の30億8,700万円、純利益は同55.9%減の22億600万円となった。

同期は日本国内で、新型コロナワクチン接種の進展等により社会経済活動が正常化する一方で、海外ではウクライナ戦争の長期化等を背景とした原燃料価格の高騰に加え、為替市場の急速な円安進行による物価上昇等、先行き不透明な状況が続いた。そうした中、グンゼの売上高は2ケタを超える増加となる一方で、営業利益、経常利益、純利益が揃って大幅に落ち込む「増収減益」となった。

セグメント別では、「機能ソリューション事業」の売上高が前年同期に比べて14.1%増の303億8,900万円、営業利益は同9.4%増の41億9,300万円となった。同セグメントは、プラスチックフィルム分野で包装用フィルムが堅調に推移したものの、原燃料価格の高騰が利益を圧迫することとなった。エンジニアリングプラスチックス分野は、半導体市場向け製品の需要増や、オフィス回帰に伴うOA市場向け製品の回復により堅調に推移した。電子部品分野は、中国向けタッチパネルが堅調に推移した。メディカル分野も堅調に推移した。

一方、「アパレル事業」のセグメントは、売上が前年同期に比べて9.6%増の300億8,200万円、営業利益は同75.1%減の1億9,000万円となった。同期の「アパレル事業」は、新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言等の行動制限解除による市況回復に加えて、ECやSPAルートも好調に推移し売上高が拡大した。しかしながら、資源価格の高騰や為替の急激な円安を受けて原材料コストが急上昇したことで、収益性が悪化することとなった。その結果、前述の通り増収減益となった。

「ライフクリエイト事業」のセグメントは売上が前年同期に比べて28.1%増の71億7,200万円、営業利益は同32.9%増の1億9,800万円となった。同セグメントでは、不動産関連分野が遊休地再開発プロジェクトの売上計上により増収となった。加えて、新型コロナウイルス禍の行動制限の解除により、ショッピングセンター事業とスポーツクラブ分野は、ともに回復傾向となった。

為替次第では、業績見通しの修正も?

上記の通り、グンゼの業績を見ると、「機能ソリューション事業」と「ライフクリエイト事業」のセグメントは増収増益と好調なのだが、「アパレル事業」のセグメントが資源価格高騰や急激な円安で原材料コストが急上昇したあおりを受けて減益を余儀なくさており、業績全体の足を引っ張っているのがわかる。

一方、冒頭で述べた通り、日銀は従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大し、12月20日から適用した。この影響から為替市場では円高(ドル安)が進行したことから、株式市場ではグンゼの利益を圧迫していた(円安による)原材料コスト高が修正され、収益性が改善するとの期待が広がリをみせている。

ちなみに、グンゼは2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比9.4%増の1,360億円、本業の利益を示す営業利益で同23.0%増の60億円、経常利益で同11.1%増の60億円、純利益で同25.9%増の37億円と従来見通し(2022年5月13日に公表)を据え置いている。ただし、これは11月2日に示されたものであり、前述の通り為替市場を取り巻く現在の環境は様変わりしている。

今後の為替市場の動向次第では、2023年3月期の連結業績予想が修正される可能性もないとはいえない。引き続き、グンゼの業績や株価動向を注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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