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子どもたちの命を守れ! 三洋貿易が「置き去り検知センサー」を2023年度導入へ

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(画像= acworks / 写真AC、La Caprese)

2022年9月5日、静岡県牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」で、3歳の女の子が送迎バスの車内に約5時間にわたって取り残され、熱中症で死亡するという事件が発生した。昨年7月には福岡県中間市の保育園でも同様の事件が発生し、国が安全管理の徹底を全国の施設に求めていたが、教訓は生かされなかった。

繰り返される痛ましい事件に、園児の置き去りを防ぐ機器導入を目指す動きもみられる。小倉將信 少子化担当大臣は9月15日、送迎バスに置き去りを防ぐ装置を導入する施設に対し、財政支援を行うことを検討する考えを明らかにした。政府は、再発防止に向けた緊急対策を10月にまとめる方針である。

そうした中、今回の事件を受けて耳目を集めている企業がある。
東証プライムに上場する三洋貿易だ。

三洋貿易は自動車用内装部品などを取り扱う商社で、今回の痛ましい事件を受けて「置き去り検知センサー」に関する問い合わせが相次いでいる、と一部新聞等で報じられている。「置き去り検知センサー」はルクセンブルクの企業が開発したシステムで、エンジンを切った後にバス内の天井に設置した複数のセンサーで人間を検知、担当者のスマートフォンや事務所に警告を発する仕組みだ。三洋貿易は、昨年7月に福岡県中間市で5歳の男の子(当時)が送迎バスに取り残されて死亡した事件を受けて、2023年度に国内導入を目指す方針を示していた。

三洋貿易の株価は9月15日に一時1,140円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年3月8日につけた年初来安値934円から約6カ月で22.1%の上昇である。

今回は三洋貿易の話題をお届けしよう。

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2022年9月期・第3四半期は増収減益

前述の通り、三洋貿易は自動車用内装部品などの産業資材のほか、合成ゴム・化学品などの原材料・副資材、機械や各種測定装置を主力商品として取り扱う商社である。1947年に旧三井物産の解体に伴い、同社神戸支店有志により設立された。

三洋貿易が8月5日に公表した、2022年9月期・第3四半期(2021年10月1日~2022年6月30日)の連結業績は、売上高が前年同期比で15.9%増の792億円、本業の利益を示す営業利益は同17.2%減の42億円、経常利益は9.7%減の50億円、当期純利益は4.9%減の36億円となった。

増収減益の主因は(1)旺盛な原材料需要で売上高がプラスとなる一方で、仕入原価の高騰等が利益を圧迫したこと(2)新規連結3社(スクラム、三洋テクノス、インド)を含む業容拡大を背景に販管費が増加したこと、などが指摘されている。

化成品、海外現地法人が好調。機械資材は大きく落ち込む

セグメント別では、化成品(ゴム事業部、化学品事業部、ライフサイエンス事業部(※マテリアルソリューション)及び子会社)の売上高が前年同期に比べ18.1%増の278億円、営業利益が同24.5%増の19億円と好調だった。ゴム事業部は幅広い産業で原材料需要が旺盛となる一方で、自動車減産の影響は限定的だった。化学品事業部は供給不足、仕入価格高騰の環境下においても、主力製品の販売好調が継続したことに加え、環境配慮型の新規商材の販売も本格化し、利益に貢献した。ライフサイエンス事業部(※マテリアルソリューション)も物流停滞の影響を受けつつも、輸出関連取引が好調に推移した。特に電子材料、中国向けリチウムイオン電池用関連部材、北米向けタウリンが好調だった。

機械資材(産業資材第一/第二事業部、機械・環境事業部、ライフサイエンス事業部(※科学機器)及び子会社)の売上高は前年同期に比べ3.0%減の252億円、営業利益は同38.1%減の20億円と大きく落ち込んだ。産業資材第一/第二事業部は、半導体不足と上海ロックダウンによる日系自動車メーカーの減産が大きく響いた。また、機械・環境事業部も飼料加工機器などで遅延がみられたほか、木質バイオマスも低調だった。ただ、一方でコスモス商事の大型の海洋開発案件(レアアースPJ関連)を計上するなどプラス材料もみられた。また、ライフサイエンス事業部(※科学機器)は新規受注の獲得は進んだものの、納入遅延が重なり低調となった。

一方、海外現地法人の売上高は前年同期に比べ39.1%増の260億円と急増、営業利益も同17.0%増の11億円と好調だった。米国で高機能性樹脂が好調に推移したほか、タイやインドネシアではゴムが堅調に推移した。また、中国は上海ロックダウンが響いたものの、6月以降は持ち直しの傾向にあるという。

厳しい環境にありながら売上高、経常利益、当期純利益は進捗率をクリア

上記の通り、セグメント別では化成品と海外現地法人が好調、その一方で機械資材が落ち込むなど明暗を分けた。今後、機械資材が回復するか気になるところであるが、半導体不足がいつ解消されるかなど現時点で不透明感は否めない。

とはいえ、全体では増収減益となったものの、売上高、経常利益、当期純利益は進捗率(75%)をクリアしている。ロシアのウクライナ侵攻を端緒とするエネルギー・資源価格の高騰や急激な為替変動といった環境下にありながらも、進捗率をクリアしている点は注目されるところだ。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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