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オートバックスセブン、株価は年初来高値圏 「既存車に乗り続ける」ための需要が業績に寄与

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(画像= Canva、La Caprese)

2022年11月28日、東京証券取引所でオートバックスセブンの株価が一時1,482円まで買われ、年初来の高値を更新する場面がみられた。今年4月15日につけた年初来安値の1,312円からおよそ7カ月半で約13%の上昇である。

オートバックスセブンは、カー用品総合専門店の「オートバックス」や「スーパーオートバックス」などを運営、あるいはフランチャイズ展開している企業である。1947年2月に大阪府大阪市において、自動車部品の卸売を目的に創業した「末廣商会」を源流とする、歴史ある企業としても知られる。後段で述べる通り、2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~9月30日)の連結業績が増収増益となったほか、10月度の月次売上概況(速報)で、国内既存店売上高が11カ月連続で前年実績を上回ったことなどが支援材料となっているようだ。

今回はオートバックスセブンの業績をみてみよう。

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オートバックスセブン、2023年3月期・第2四半期は増収増益

10月31日、オートバックスセブンは2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~9月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期に比べて3.4%増の1,070億9,600万円、本業の利益を示す営業利益は同20.2%増の35億400万円、経常利益は20.5%増の37億1,500万円、純利益は66.8%増の31億4,900万円と増収増益となった。

セグメント別では、「国内オートバックス事業」の売上高が前年同期に比べて3.9%増の821億8,300万円、セグメント利益は同0.8%増の72億9,500万円となった。また、同セグメントの出退店は、新規出店が1店舗、退店が1店舗、業態変更が1店舗で、2022年3月末から増減なしの588店舗となった。

国内オートバックスチェン(フランチャイズ加盟法人店舗を含む)は、新型コロナウイルスの感染拡大に加えて原油や原材料価格の高騰などを背景とした物価上昇の影響が懸念される一方で、個人消費に持ち直しの動きがみられたことに加え、価格改定後の販売促進を強化したこと等が功を奏し、堅調に推移した。また、同期は新車や中古車の登録台数が減少する状況下で、「既存車に乗り続ける」ために必要な車両のメンテナンス需要が高まり、関連商品とそれに伴うサービス工賃が好調に推移した。

前述の通り、同期は主力商品の価格改定が相次いだ。タイヤについては、メーカー値上げを受けて5月と9月の二度にわたり店頭での価格改定を実施したが、品揃えや販売促進、既存車のメンテナンス需要を背景に好調に推移した。オイルやバッテリーについても価格改定を実施したものの、効果的な販売促進に加えメンテナンス需要の高まりにより好調となった。一方、カーエレクトロニクスや車内用品については、新車減産の影響もあって売上高が減少した。

プライベートブランドについては「AQ.(オートバックスクオリティ.)」を中心に展開を進め、2022年9月にスタッドレスタイヤの新商品「North Trek N5(ノーストレック エヌファイブ)」を発売した。また、心躍るガレージライフを提案するブランド「GORDON MILLER(ゴードンミラー)」を展開するなど、多様な消費者ニーズを捉えた商品の開発・販売を推進した。

車検・整備については、スキャンツールを使用して「車の状態を電子的に確認する」車両診断サービスが好調に推移した。なお、同期は運転支援機能や自動運転機能が付いた先進安全自動車の整備を行う「自動車特定整備制度」への対応を推進し、車検指定工場の全店が特定整備認証(電子制御装置整備)を取得した。

海外事業では新規取引先の開拓を推進

一方、「海外事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて26.8%増の68億1,800万円、セグメント損益は1億1,000万円の損失(前年同期は1億6,900万円の損失)となった。また、同セグメントにおける出退店は、新規出店が9店舗で、2022年3月末の62店舗から71店舗となった。

「海外事業」のセグメントも、ウクライナ情勢や世界的なインフレの影響を受けたものの、小売・サービス事業の売上高は増加し、卸売事業においても新規取引先の開拓等を背景に売上高が伸長した。

フランスでは、インフレなどの影響があったものの、価格適正化などの対策を講じたことで、売上高は前年同期を上回った。また、シンガポールにおいては、堅調な小売に加え、メンテナンス需要の増加によるピットサービスの好調により、売上高が増加した。マレーシアでは、92店舗に拡大したオーソライズドディーラーへの卸売が好調で、売上高が大幅に増加した。

中国においては、上海のロックダウンの影響で新規卸売先の獲得に苦戦したものの、中国国外への卸売を進めたことで売上高が増加した。オーストラリアは、カーエレクトロニクス商品や無線機が好調で、新たな卸売先の開拓や専売品の導入などにより、売上高が堅調だった。

「オートバックス法人会員制度」の加入件数も順調に増加

「ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて3.2%減の223億4,700万円、セグメント利益は2,800万円(前年同期は2億5,500万円のセグメント損失)となった。

ディーラー事業は、オートバックスセブンの完全子会社のオートバックス・ディーラーグループ・ホールディングスがBMW、MINI、Audiの3ブランドの正規ディーラーを運営している。同期は世界的な半導体不足による新車減産の影響を強く受け売上高が減少したものの、効率的な運営に努め、前年同期を上回る営業利益を確保した。

BtoB事業においては、社用車のメンテナンスやカー用品などの法人一括払いが可能となる「オートバックス法人会員制度」への加入件数が順調に増加した。加えて、車検・整備・タイヤ販売を行う子会社においても、メンテナンス需要を背景に売上高が堅調に推移した。さらに、他業種への卸売の拡大を図るため、卸売専用プライベートブランド商品の開発も推進した。

なお、「その他の事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて26.0%増の31億3,200万円、セグメント損益は2億2,600万円の損失(前年同期は3億9,200万円のセグメント損失)であった。

既存店売上高は11カ月連続で前年実績を上回る

ちなみに、オートバックスセブンが11月8日に発表した2023年3月期10月度(2022年10月)の月次売上概況(速報)によると、国内既存店売上高は前年同月比6.9%増と11カ月連続で前年実績を上回った。

同月は「既存車に乗り続ける」ために必要な消耗品として夏タイヤが堅調に推移したことに加え、全国的に気温が下がったことにより冬タイヤの売上高も伸長した。同じく、既存車のメンテナンス需要を背景に、量り売りオイルやプライベートブランドオイルのほか、ハイブリッド車やアイドリングストップ車用のバッテリーも好調だった。また、サービスではタイヤ・ホイールやバッテリーなどの交換工賃が好調に推移、車検・整備も2ケタの伸長となった。さらに、新車減産を背景に中古車の平均単価が高騰するなか、業販も2ケタの伸びを記録した。

さて、今回はオートバックスセブンの業績をみてきた。新車や中古車の登録台数が減少する中、オートバックスセブンでは「既存車に乗り続ける」ために必要な車両のメンテナンス需要や、それに伴う関連商品・サービス工賃が業績に寄与している構図を読みとることができた。

新型コロナウイルスの感染状況や、ロシア・ウクライナ情勢、原油や原材料価格などの先行き不透明感は依然として否めない。こうした状況下、引き続きオートバックスセブンの業績・株価に注目しておきたい。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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