2022年11月15日、東証プライムに上場するワタミの株価が一時1,056円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年3月8日に記録した年初来安値の853円から約8カ月で23.8%の上昇である。
ワタミは、居酒屋とファミリーレストランの中間を基本コンセプトとした『居食屋 和民』などの外食産業を中心に事業展開する企業だ。ワタミは先週11月11日の取引終了後に新型コロナウイルス禍で未定としていた2023 年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、大幅な業績改善見通しを示すとともに、配当予想を10円とし、3期ぶりに復配の意向を示した。さらに同日発表の2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~9月30日)の連結業績が増収増益となったことも株価に追い風となった(詳細は後述)。
今回はワタミの業績をみてみよう。
ワタミ、2023年3月期は大幅な増収増益となる見通し
2022年11月11日、ワタミは未定としていた2023 年3月期(通期)の連結業績予想および配当予想を明らかにした。

上記の通り、ワタミは2023 年3月期(通期)の売上高について前期比19.6%増の770億円、本業の利益を示す営業利益で9億円(前期は35億7,700万円の赤字)、経常利益で前期比57.6%増の42億円、純利益で30億円(前期は18億4,400万円の赤字)と大幅な増収増益となる見通しを示した。
ワタミは通期見通しを公表した理由について、(1)国内外食事業の不採算店舗の撤退、賃料減額交渉、経費削減等の固定費削減を実施したこと、(2)外食需要の社会的な回復傾向も相まって、2023年3月期・第2四半期の連結業績において、国内外食事業で改善がみられたこと、(3)宅食事業においても冷凍惣菜の販売、テレビショッピング放映等の販売強化を進める中で、大幅な増収増益を実現したこと、(4)下半期の国内外食事業は、新型コロナウイルスワクチンの接種の増加、屋外でのマスク着用や会食における人数制限の緩和、入国制限の撤廃によるインバウンド需要の増加などを背景に(上期に比べ)大幅な改善が見込まれること……などを挙げている。
なお、前述の通り、ワタミは配当予想を10円とし、3期ぶりに復配の意向を示した。
第2四半期は大幅な売上増、営業黒字に転換
ちなみに、ワタミは同日に2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~9月30日)の連結業績を公表している。同期の売上高は前年同期に比べて36.4%増の390億5,000万円、本業の利益を示す営業利益は9億2,300万円(前年同期は30億7,800万円の赤字)、経常利益は41億8,200万円(前年同期は16億2,400万円の赤字)、純利益は32億2,900万円(前年同期は 30億300 万円の赤字)と大幅な増収増益となった。
セグメント別では、「国内外食事業」の売上高が前年同期に比べて110.8%増の114億1,600万円、セグメント損失は12億8,100万円(前年同期は38億5,000万円の損失)となった。同期は16店舗の新規出店と34店舗の撤退を実施し、店舗数は387店舗となった。屋外でのマスク着用や会食における人数制限の緩和など飲食業界における経済活動は徐々に回復傾向にある中、売上高の増加とセグメント損失の大幅な縮小となった。
一方、「宅食事業」の売上高は前年同期に比べて22.3%増の236億6,700万円、セグメント利益は同124.4%増の38億6,600万円となった。新型コロナウイルス禍の外出自粛等による宅配需要と健康意識の高まり等で大幅な増収増益を記録した。
テイクアウト・デリバリー、焼肉店の成長戦略を推進
「海外外食事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて3.0%減の23億1,500万円、セグメント損失は6億1,700万円(前年同期は6,400万円の損失)で減収減益となった。同期の海外外食事業は、4店舗の新期出店と8店舗の撤退を行い、期末の店舗数は46店舗となった。
一方、「環境事業」セグメントは売上高が前年同期に比べて17.4%増の12億5,500万円、セグメント利益は同71.0%減の2,200万円となった。「環境事業」は電力小売事業を中心に展開しているが、販売単価の上昇で売上高は増加したものの、仕入単価も上昇したことで利益は縮小した。
また、有機農産物の生産、酪農畜産を展開する「農業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて5.8%減の3億4,200万円、セグメント損失は1億300万円(前年同期は6,000万円の損失)であった。
ワタミは、国内外食事業において引き続き固定費削減に取り組むとともに、テイクアウト・デリバリー業態および焼肉業態店舗の展開等による成長戦略を推進する方針である。また、入国制限の緩和や急激な円安により見込まれるインバウンド需要の取り込みを行うほか、宅食事業においてはナチュラルデリ等の冷凍惣菜の販売開始、大手乳飲料メーカーアイテムの販売開始等で継続的な成長を見込んでいる。新型コロナウイルス禍で苦戦を強いられていた飲食業界も次第に正常化するとの判断から、前述の通り、2023 年3月期(通期)の連結業績の大幅な改善見通しとともに、3期ぶりの復配を決断した。
引き続き、ワタミの業績・株価に注目しておきたい。■
(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)