GCL2505株とイヌリンによる「認知機能」の改善を確認――江崎グリコの研究成果

2023年10月12日、江崎グリコ（本社：大阪府大阪市）は、 短鎖脂肪酸を多く生み出す（※1） 同社独自のビフィズス菌「GCL2505株（Bifidobacterium animalis subsp. lactis GCL2505）」と水溶性食物繊維イヌリンによる認知機能の改善効果を確認したと発表した。

本研究成果は 2023年9月27日に国際科学雑誌「Nutrients」に掲載された。江崎グリコは「タンサ脂肪酸プロジェクト」として短鎖脂肪酸の研究と啓発活動を積極的に進めており、今後も GCL2505 株と短鎖脂肪酸の可能性を探る方針である。本研究成果の概要は以下の通り。

GCL2505株とイヌリンによる「認知機能」の改善を確認

現在日本には20人に1人に相当する600万人以上の認知症患者がいるとされている（※2）。さらに、世界には現在5,500万人の患者がおり、2030年には7,800万人、2050年には1億3,900万人にまで増加すると推定されている（※3）。認知症は世界的な社会課題であり、解決策が求められている。

認知症の大多数はアルツハイマー病であり、脳細胞の減少によって脳が萎縮することで引き起こされる。しかも、アルツハイマー病は一度発症すると症状を改善させることが困難な病気とされている。現在のアルツハイマー病治療薬では病態の進行を遅らせることしかできないため、未だ根本的な治療法は存在しない。そのため、対策としては発症する前の予防がとても重要となる。アルツハイマー病の前段階にあたる状態として軽度認知障害（MCI）という状態があるが、MCIは正常な状態と認知症の中間の状態で、MCIであれば正常状態に回復することが可能だと言われている。そのため、普段の生活の中でMCIから回復させる方法、さらにはMCIになることを防ぎ、アルツハイマー病患者を増やさない対策が求められている。

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認知症に対するGCL2505株と短鎖脂肪酸の可能性

アルツハイマー病は肥満など身体の炎症と深い関係があることが最近判明している（※4）。すなわち、肥満や炎症を抑えることでアルツハイマー病の進行を抑える可能性が期待されている。

ちなみに、江崎グリコ独自のビフィズス菌であるGCL2505株は健康な成人から分離されたプロバイオティクス株で、これまでの研究により、内臓脂肪の低減効果が明らかにされている（※5）。また、GCL2505株はヒトの腸内にいる一般的なビフィズス菌と比べて短鎖脂肪酸を多く産生することも明らかになっている（※1）。その短鎖脂肪酸と炎症の関連性についても研究が進む中、江崎グリコではGCL2505株とイヌリンによる認知機能への影響を確認する研究に着手した。

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総合注意力、認知柔軟性、実行機能領域、神経認知インデックス領域が有意に改善

まず、物忘れの自覚がある、または他人から物忘れを指摘されたことのある健常な成人男女80名を対象に、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を行なった。

その結果、1日あたり100億個のGCL2505株と2gのイヌリンを12週間摂取した群（GCL2505群）は、プラセボ群と比較して、コグニトラックス検査における総合注意力、認知柔軟性、実行機能領域に加え、総合的な認知機能の評価に用いられる神経認知インデックス領域のスコアが有意に改善した。またGCL2505群の糞便中のビフィズス菌数は、プラセボ群と比較して有意に高い値を示した。

すこやかな毎日、ゆたかな人生の実現に向けて

現在、専用の治療薬が国内外で承認に向かうなど、アルツハイマー病の解決に向けた動きが世界中で加速しているが、認知症を予防する有効な方法は未だ確立されていない。そうした中、本研究成果によってGCL2505株とイヌリンの継続的な摂取は認知機能の改善につながる有効なアプローチである可能性が示唆された。つまり、日常的にGCL2505株とイヌリンを取ることで、アルツハイマー病発症を予防できる可能性がある。

江崎グリコは今後もGCL2505株と短鎖脂肪酸の可能性を探り、同社のパーパスであるすこやかな毎日、ゆたかな人生の実現に努める方針である。

江崎グリコのさらなる研究成果を期待したい。■