「CCN2が毛細血管へ働きかけ、美肌に重要な成分を増加させる『美肌遺伝子』であることを発見」――。 2024年4月9日、大手化粧品メーカーの資生堂(本社:東京都中央区)からそのような研究成果が発表された。
資生堂は20年以上独自に研究を進めてきた、肌老化を促進する悪玉因子セルピンb3の遺伝子発現量が高い時、肌の組織構造の強化などに関わる遺伝子であるCCN2の発現が有意に低くなることを明らかにした。また、CCN2は毛細血管に存在する細胞ペリサイト(※1)(図1)に働きかけ、美肌を維持する上で重要なコラーゲンの主要構成成分(※2)やヒアルロン酸の前駆体(※3)を増加させることを発見し(図2)、CCN2がいわば「美肌遺伝子」であることを突き止めた。さらに、CCN2の遺伝子発現を促進する成分として、チャノキの葉エキスを見出した。

ちなみに、CCN2発現量は年齢と相関関係がないことも確認されている。資生堂は本研究成果を活用し、年齢に関わらず美しく健やかな肌を実現する新たなソリューション開発を目指す方針である。
本研究の概要は以下の通りである。
(※1)毛細血管の血管内皮細胞に接着し、毛細血管の構造を安定化している細胞。血管周皮細胞とも言う
(※2) ヒドロキシプロリン
(※3) N-アセチルグルコサミン-6-リン酸
CCN2が毛細血管へ働きかけ、美肌に重要な成分を増加させる「美肌遺伝子」であることを発見
資生堂はこれまでに悪玉因子セルピンb3が紫外線や花粉、睡眠中断など体内外の様々な要因で増加することによって、表皮にダメージを蓄積させることに加え、基底膜や真皮にまで悪影響を及ぼすなど、肌老化を加速するメカニズムを明らかにし、セルピンb3の増加を抑えるアプローチを基に研究を行ってきた。
また、20年以上にわたり肌と密接な関係を持つ毛細血管の研究にも注力しており、毛細血管が肌の弾力を生み出すメカニズムも明らかにしている。そして、適度な弾力の環境下では、毛細血管中に存在する因子APJの発現が高まり毛細血管が太くなることを確認した。さらにその後の研究で、毛細血管の外側に接着しているペリサイトが表皮幹細胞様に変化することで表皮の再生を促している可能性を発見した。
本研究は、上記の悪玉因子セルピンb3に関する独自研究と血管研究を掛け合わせ、皮ふ内部と肌状態の関係をさらに解明し、より美しく健やかな肌を実現するための新たなソリューション開発への応用を目指した。
悪玉因子セルピンb3と関連して変動する「美肌遺伝子」CCN2の発見
資生堂は悪玉因子セルピンb3の発現が増えた際に影響を受ける遺伝子を広く調べ、CCN2という遺伝子の発現量が、セルピンb3が多く発現した際に低くなることを確認した。(図3)

CCN2が美肌を実現するメカニズムの一つとして、毛細血管への効果など新知見を発見
これまで美肌との関連が深いことがわかっているペリサイトとCCN2の関係性を調べる研究を行ったところ、CCN2がペリサイトに働きかけることで、真皮の組織構造を強化し、ハリを実現するのに必要なコラーゲンの主要構成成分が増加すること、また、肌のうるおい保持に欠かせないヒアルロン酸の前駆体が増加することを発見した(図2)。これにより、CCN2は毛細血管にもペリサイトを介したアプローチが可能な遺伝子であるということを確認した。
また、CCN2の発現量は年齢と相関関係がなく、どの年代でもアプローチ可能な遺伝子であることも明らかにた。(図4)

CCN2の遺伝子発現量を増加させる化粧品原料「チャノキの葉エキス」

続いて、CCN2の遺伝子発現を促進する上で有用な成分を探索したところ、チャノキの葉エキスにCCN2の発現促進効果を見出した(図5)。資生堂は本エキスを活用し、CCN2の発現促進を介して毛細血管、真皮や肌構造へアプローチし、年齢に関わらず、美しく健やかな肌の実現を目指す方針である。■
(La Caprese 編集部)